女が鳴海の後ろの穴へ張型を差し込む。世には出回らぬ、置屋ゆえにあるものである。旦那さんは良い顔しませんが、先生には特別にと仰っていましたよ、と女は囁いた。鳴海は抱かれる女のように脚を広げ、胸を上下させている。
「先生があの美しい青年に恋を募らせているのなら、この張形ではとうてい敵わないでしょう」
鳴海は乱れた息とともに笑いをこぼした。
その青年を鳴海は一度だけ座敷につれてきたことがある。宴の間、いっときも膝を崩すことなく、女たちの艶めいた戯言にも動じず、際限なく酒に酔う鳴海を涼しげに見つめていたのを女は覚えていた。
「あの子とするのでは先生の体がもたないのではなくって」
女はゆっくりと張型を動かす。左手は鳴海自身に、右手は男をかたどったそれを握って中心をえぐっているのである。
「あの子にもこんな風に抱かれたのかしら、それとも抱いてもらえないからお座敷にいらっしゃるの」
「だとしたら、随分といけない遊びだ」薄い笑みをはりつけたまま、鳴海は言う。「俺からライドウを誘うことはないよ」
「意地が悪い。かわいそうにいまごろ寝屋でひとり己を慰めているかもしれない!」
女の襦袢はすでに乱れてたわわな乳があらわになっている。鳴海は己の脚の間に女を抱え込むようにし、女は仕方のない人と息をつきながら鳴海の身体にまたがった。己の膣に鳴海を押し込め、こうしてあの子も抱いてしまえばいいのに、と云う。鳴海の指が女の腰を撫でる。
「ふうむ、今度はライドウをまたがらせてみるのも良いかもしれないな」
「かわいそうな坊や」
「坊やではないさ、坊やだったことなどない男だ、あれは」
女は己の腰を前後に振り、それと同時に鳴海につきたてた張型を同じようにぐいぐいと動かす。愉快、愉快と笑っていた鳴海も次第に乱れた息しかつけなくなる。
鳴海は右太ももを己の身体に引き寄せる。鳴海はライドウの肩にそれが持ち上げられるのを思う。いつもそうしてライドウは後ろの穴をじくじくと犯すのだ。鳴海は中心からライドウが抜けていくたびに穴をきゅうと締め、浅く喘ぎながらも笑みを消すことはない。自ずと乱れるのはライドウの吐息ばかりで、ライドウはそれに不満を覚えている風情であった。組み伏せているのは己であるのに、鳴海の上にたてたことなど一度さえない。己が乱しているはずの鳴海のパジャマの皺さえ憎らしい。そしてそういうとき、鳴海は決まってこう云うのだった。
「ライドウ、もっと好きにしていい」
この悪人をどうしたら黙らせられるのか。ライドウはそう思ったに違いない。はじまり――己の気持ちの走るままに劣情を吐き出したとき――でさえ鳴海はこう云ったのだ。「まったくかわいい悪戯をする」。
鳴海はライドウの頬が火照る様を思い出した。
「美しいのだよ――みなは知らないのかもしれないけれど、あれに色が入ると大層美しい」
いけないひと、と女が言った。
頭の中でライドウが己の奥へと進み、彼は大きく息を吸う。鳴海さん。聞こえるはずもない呼びかけが耳を擽る。女がいよいよ張型から手を離して喘ぎ始めたとき、鳴海もまた夢想の中でライドウに抱かれているのであった。鳴海は己の手でもって、張型を奥へと差し込んでいく。
『ええ、ひとり書生を預かることになりましてね、ははは、子供を飼うなんて人聞きの悪い、俺はただの目付け役ですよ』
――鳴海さん。
「ああ、」
鳴海の身体が震える。女の喘ぎはやまぬまま、鳴海が薄く目を開けると、そこには白皙の美しき青年の影が揺れているのである。